【BM研究会】学校法人京都情報学園のBMを分析!

2018年10月26日(金)に開催しましたビジネスモデル研究会のご報告です。

今回は、帝国データバンクさんとASTEMの共催で行いました。

テーマは、この研究会で初となる「学校法人」です。
学校法人とは、公益法人の一つで、私立学校の設置を目的として「私立学校法」によって定められた法人で所轄庁は、文部科学大臣もしくは都道府県知事です。また税法上は公益法人等に分類されるため、会計分析を見るときにも営利企業とは異なる視点が必要です。

学校法人京都情報学園とは

京都や関西では特にメジャーな「京都コンピュータ学院」という4年生の専門学校があります。一度はテレビCMを見たことがある人も多いのではないでしょうか。

その京都コンピュータ学院のグループに位置する学校法人が、今回のテーマである京都情報学園が運営する「京都情報大学院大学」です。


(京都情報大学院大学HPのキャプチャ画像 ’18/10/30)

京都コンピュータ学院(KCG)が「専門学校」とすると、京都情報大学院大学(KCGI)は「KCGの大学や大学院」という位置付けと考えられます。

KCGはグラフィックデザインやコンピュータプログラミングなどの職種に近く、KCGIはIT実務に特化し、加えて経営学などITと経営を軸にしたCTOのような人材を育てるすることを目的としているようです。

またホームページでは「日本最初のIT専門職大学院」とされており、特徴として「実務に近い学びによって、就職やセカンドキャリアを築くことができる(*)」という点があげられます。
*あくまで研究会で出た意見ですので、効果効用を保証するものではありません。

京都情報大学院大学のビジネスモデルとは

研究会では、まず帝国データバンクの齋藤様より直近の収支についてご教授いただきました。学校法人として売上に計上されるのは、主に授業料収入となります。KCGIの売上高は非常に堅調に右肩上がりとなっており、直近の教育活動収支差額は8億円の黒字となっています。

売上高、収支差額を見るだけでも、非常に人気があり、かつ安定的な経営をされていると判断できそうです。

ITと経営に特化することで、入学生のニーズ(入り口のニーズ)と、人材を採用する企業側のニーズ(出口のニーズ)をうまくマッチングしているとも言えます(下図)

京都情報大学院大学のビジネスモデルキャンバス

少ない正社員(事務職員)でスリムな経営(健全経営)を行なっていることを、ビジネスモデルキャンバス上で表すために、講師・教授陣はキーパートナー「非常勤の教授陣」と記述しました。

顧客との関係は、「キャリア設計のコンサルテーション」とすることで、KCGIが学生のニーズと採用企業のニーズを最適にマッチングすることを表しました。

ビジネスモデル研究会の議論の最後に、価値提案の項目に「学生、親、企業の『不安を消す』」を書き入れました。

クリステンセンのジョブ理論では、企業は「顧客のジョブ」を中心に製品・サービスを設計し、また「顧客のジョブ」を中心に組織をつくるべき。ということが語られています。

この京都情報大学院大学の顧客(ステークホルダー)のジョブは「学生、親、企業の『不安を消す』こと」だと言えそうです。

・自身の就職への不安
・子供の将来の不安
・企業の採用の不安

を解消する装置(ビジネスモデル)として、捉えてみることで、異業種、異分野のビジネスモデルにも転用や参考にすることができるかと思います。

チャネル面では、グループ間でのシナジーが生まれている点も秀逸です。学校側から見るとLTV(Live Time Value)の増加であり、学生側から見るとスキルアップ=年収アップという分かりやすい目的設定ができるので、動機がハッキリしている点があげられます。企業から見ると、優秀な(最適な)人材を見つけることができ、即戦力や離職率の低減といった効果を望めそうです。

そして「不安・不満解消」だけでなく、「社会人のセカンドキャリアへの意欲・向上心」といったポジティブな感情への働きかけも同時に行なっているところがとても素敵ですね。

ネガティブな見方をすれば「単なる職業訓練校なんじゃないの?」といった視点もあるかもしれませんが、教授陣やカリキュラム、ホームページなどでしっかりとした戦略的なブランディングを行なって、「大学院大学」のイメージを高め、ステークホルダーへの動機付けを怠っていない点も見逃せません。

ということで、今回は、京都情報大学院大学のビジネスモデル研究でした。

次回は11月30日(金)に開催を予定しています。
初めての方でもお気軽にご参加いただき、わいのわいの語りあったりできると幸いです。

(文責:亀田IM)

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