今回は楽天モバイルのビジネスモデルを議論・分析の対象としました。
格安スマホ・格安サービス・特典ポイントで、一気にシェア拡大を狙う、その戦略意図はどこにあるのか、参加者と共に議論しました。
楽天モバイルとは
楽天モバイルは楽天グループの一部で、携帯電話の移動体通信サービスを提供する。MNOとして、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクに続く、いわゆる「第4のキャリア」です。
現在、公開されているホームページには、通信サービスプラン「Rakuten UN-LIMIT 2.0」は、1年間無料。プラン料金は2980円/月です。
主なサービスの特徴は3つ。
– 日本全国どこでもデータ使い放題(楽天回線エリア)
– 国内通話かけ放題(Rakuten Linkアプリ利用)
– グローバル無料(海外66の国と地域の通話)
契約特典として、楽天ポイントを最大21,300ポイントの還元となっています。
技術的特徴
楽天モバイルHPによると「世界初、完全仮想化新世代ネットワーク※低価格・高品質なサービスをあなたに。楽天モバイルは、全く新しいコンセプトのネットワークで通信サービスに革命をもたらします。」とあります。
これまでの携帯ネットワークは、特定の専用ハードウェアに依存していましたが、楽天モバイルは仮想化技術によって、ソフトウェアとハードウェアを分離。大幅なコスト削減を実現することで、他のキャリアと差別化がなされています。
議論の中では、
・他のキャリアは、既にハードウェアを完備しているので、現状の設備維持を強いられることで、仮想化技術を導入することは難しいと考えらえる。
・5Gへの対応も仮想化技術で行うため、比較的早く対応するのでは。
といった話もありました。
ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルキャンバスの作成にあたり、楽天モバイル単体で考えてもあまり意味がない、といった意見もありました(ご無理ごもっともだと思います)が、今回は楽天モバイルを中心に据えて、楽天グループ(楽天の他サービス群)をパートナーとして考えることで、楽天モバイルそのものの事業インパクトを探ることにしました。
まず、顧客セグメントですが、サービス価格や楽天ポイントが購買動機に挙げられる点から、ファミリー・法人・ビジネスピープルとしました。
今回のビジネスモデルキャンバスで最も特徴的なのは「収益の流れ」です。
通信料による収益が向こう1年間は0円という点。楽天モバイル単体(スマホ販売や通信料)で黒字化を狙う事業ではなく、楽天本体の事業シナジーが狙いという議論から、「ユーザーの顧客データ」及び、それらを解析した「レコメンデーションデータ」を収益(事業によって獲得できるもの)としました。
・楽天市場=オンライン上のユーザー行動データ
・楽天モバイル=オフラインを含むユーザー行動データ
を掛け合わせることで、最適なレコメンドを行うことで、事業売上を高めるビジネスモデルという議論を行いました。
所感
複合的な事業において、個人情報の活用によってシナジーを出すことが重要な戦略の一つとなっています。企業としては当然「個人情報の取得」を表立って行うわけにはいきませんし、個人もわざわざ個人情報を提供することはしません。そこで、双方の合意が取れるバランスが発生します。「便利」「楽」「楽しい」といった購買行動・意思決定に影響を与える程度のギブとテイクのバランス。楽天モバイルのサービスや特典は、そのバランスを数値化したものと言えるかもしれません。
Google, Amazon, Facebook, Apple…世界を席巻するビジネス・ビジネスモデルは、それぞれのサービスで、この絶妙なバランスを作り出し(演出し)、成功を納めてきたとするなら、これから新規事業やベンチャーを立ち上げる際にも、最適なバランスを有するビジネスモデルを構築するため、仮説検証を行い続ける。という学びが得られるかもと。
企業は、膨大な個人情報を手に入れ、AIで分析し、最適化したマーケティングによって最適な幸せを提供する。個人は最適化されたサービスにより、個人情報を提供し、最適な人生を手に入れる。幸せとは何か、価値とは何かを考え、選択する必要性すらデータの大流に融けていくような、、、壮大な妄想に辿り着きつつ、記事を書き終えます。
次回、ビジネスモデル研究会
次回のビジネスモデル研究会は7月17日(金)18:00〜です。
次回は、オンラインでの参加及びオフラインでの参加もできるようにします。
引き続き、宜しくお願いいたします。